2016年10月19日(水)

「冒険の森へ」編集者の私的解説 vol.51
伴野朗「三十三時間」

 

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「バンノアキラさんの「三国志」を読みました」学生は答え、私はのけぞった。そんな「三国志」は知らんぞ。 
  集英社の面接である。漫画誌、女性誌、芸能誌、営業系と私でチームになって、入社希望の学生と、履歴書を見ながら話すのである。「最近読んだ本」などに興味深いことが書いてあると私の出番、ということになる。
「三国志、水滸伝を読んでいます」
  と書いてあるので、当時、北方「水滸伝」の原稿を毎月もらっていた私が代表質問に立たねばいけんではないですか。
「三国志」「水滸伝」の異本は、すべて目を通していた。それを学生が読んだ「三国志」を知らないでは、私が困るのだ。やがて質疑のあとに、「あのね、それは、バンノアキラではなく、トモノロウと読むのですよ」
  確かに伴さんは、呉国視点での「三国志」を書いている。
  ルビの重要さを今さらながらに感じたものである。ある対談のテープおこし原稿で、「ハームラリオ」という作家が出てきて仰天したが「石の血脈」を書いた、と続いたから「ハームラリオ」は「半村良」であることはわかったのであるが、文脈次第によっては、解読に時間がかかったであろう。
  その伴野長編群から、時間制約の中での情報伝達戦を書いた「三十三時間」が選ばれた。緊迫した時間の中で、ある空間を移動する、という「道中もの冒険小説」の見本のような作品であるが、「危険な旅路」の巻ではなく、この巻に入った。
  その経過については、省略させていただく。