2016年11月18日(金)

「冒険の森へ」編集者の私的解説 vol.54
生島治郎「男たちのブルース」

 

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  この「冒険の森へ」を立ち上げる時に、まず叩き台という意味として、冒険・ハードボイルドの長編40編を抽出して2冊づつ年代を追って羅列するレジュメを作った。
  そして後に編集委員になってもらった作家にひとりづつ会いに行った。全員が私が現役編集者時代に担当していたこともあり、引き受けてくれるだろうな、という予感はあった。
  生島長編は、迷った。冒険小説なら「黄土の奔流」、ハードボイルドなら「追いつめる」か「傷痕の街」。この三冊を読み直して、とりあえず「黄土」を入れておいた。相方は大藪春彦「野獣死すべし」。発表時期が近かったので、クロニクル性を考えるとこうなるのだ。誰が選んでも、だいたいこのあたりになるはずである。
  しかし、大沢在昌氏のちの編集委員は、赤のペンで名作「黄土の奔流」をぐりりと消して代わりに「男たちのブルース」と書いた。
  うーむ、である。当該の「男たち」は35年ほど前に読んだ記憶があるのだが、ほとんど覚えていない。
  しかし、大沢さんは生島さんの愛弟子であり、この企画の編集委員としては不可欠な人材である。こと生島さんについては、あのカラスは白い、と大沢さんが言われれば白いのである。
  もし相手が、夢枕委員であったりすれば、「あのカラスはカラスではあるがマスカラス」などとわけのわからんことを言って場外乱闘に持ちこむ手もあるのだが、プロレスに興味のない大沢さんに通用するはずもない。
「ごもっとも!」
  戻って調べてみると、「男たち」は「野獣」の15年もあとに刊行されている。
  クロニクル性は、たちまち崩壊した。