2016年12月7日(水)

「冒険の森へ」編集者の私的解説 vol.56
山田風太郎「甲賀忍法帖」

 

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  忍者といえば、黒ずくめに黒覆面、水中を潜って敵城に潜入し、闇に紛れて天井裏、小太刀を背負って手裏剣マキビシ炸裂弾、目的の巻物を盗んだあとに、追って来た武芸者50人ぐらいを翻弄して、かんらかんらと笑いながら、去ってゆく。
  これが、フツーの忍者のイメージであろう。
  これはしかし、忍者は忍者でも、陰忍である。
  陽忍、というのが別にいる。極論すれば学んだ医術なり鍛冶なり芋植えなりの技術を持って堂々と住みつき、妻などもらって子供をつくり、えんえん二十五年、その土地に溶けこんで情報を雇い主に流し続け、いざ合戦となったら今度は、敵の武将を調略する。
  この陽忍も、立派な忍者なのである。
  あまり、小説、漫画、映画にならないのは、やはり地味だからであり、地味でなかったら陽忍は務まらんのである。
  当然、本集に収録された忍者たちも派手なほうの陰忍を選んでいる。悩んで悩んで何十年、という正しい陽忍の小説は、ブンガクになってしまうじゃありませんか。
  さて、呪文を唱えて消える「忍術使い」が「忍者」となったのは、柴田錬三郎、五味康佑、山田風太郎などの作家たちの功績である。大ブームを巻き起こし、あの司馬遼太郎ですら忍者小説で直木賞をもらったくらいである。
  さて、この「甲賀忍法帖」の功績については、巻末の夢枕獏編集委員の解説を読めば、もうつけ加えることはない。
  私は、この作品を「超能力者」の巻に入れるという暴挙を行い、編集委員全員の集中砲火を浴びて轟沈した。
  せめて、手裏剣の雨、くらいにしてほしかったなあ。